このアプリについて
円形鋼管柱+円形ベースプレートの露出柱脚について、
日本建築学会『鋼構造接合部設計指針』2013年 §7.1 および解説C7章
【露出柱脚の設計例3】円形鋼管柱を用いた露出柱脚の設計(pp.316〜319)に従って、
①アンカーボルトの引張検定、②基礎コンクリートの圧縮応力度検定、③せん断検定、
④ベースプレートの曲げ検定(圧縮側/引張側)、⑤全塑性曲げ耐力・最大せん断耐力
を算定します。1つの柱脚を「1ケース」として複数ケースをまとめて管理・計算書出力できます。
使い方(基本の流れ)
- 左の入力諸元を入力すると、右に結果(判定・検定比・断面図/応力図)が即時に更新されます。
- 内容が固まったらツールバーの「✓ 確定」でケース一覧に追加されます(確定するまで一覧には残りません)。
- 一覧の行クリックで再編集(編集後は再度「✓ 確定」で上書き)。行右の ↑↓ で並び替え、× で削除。
- 「🖨 計算書出力」でA4計算書(省略モード)をブラウザ印刷・PDF保存できます。
- 入力一式は「💾 保存」でJSONに保存、「📂 開く」で読み込めます。
入力のポイント
- 単位は SI(力 kN・モーメント kN·m・寸法 mm・応力度 N/mm²)。
- 設計応力 N・M・Q は柱脚位置の短期(地震時)応力。N は圧縮を正とし、本手法は N > 0 が前提です。
- ボルト円直径はアンカーボルト配置円の直径。
- 配置は「曲げ軸上に1本配置」が既定(設計例3と同じ)。「半ピッチずらす」を選ぶと曲げ軸上にボルトが来ない配置になります。
- アンカーボルトの断面積・基準強度は指針 表C7.1(ABR: JIS B 1220-2010)/表C7.2(ABM: JIS B 1221-2010)の値を内蔵しています。
- 柱の材質・板厚は参考値(柱の全塑性モーメント Mpc)の算出だけに使い、検定には用いません。
適用範囲・注意(先に確認)
- 円形鋼管柱+円形ベースプレート専用。角形柱・角形ベースプレート・リブプレート付き柱脚は対象外です(設計例1・2の手法が必要)。
- 圧縮軸力 N > 0 が前提。引張軸力・軸力ゼロのケースは計算できません。
- アンカーボルトの定着(コーン状破壊)・基礎躯体側の検討は本アプリの対象外です(指針 設計例1(4) 参照)。別途検討してください。
- ベースプレート下面には無収縮モルタル(圧縮強度 Fc 以上)が充填され、支圧が全面に伝達されることを前提としています(指針 §7.2(1)5))。
- アンカーボルトはねじ部先行破断しない(軸部降伏が保証される)ものとしています(指針 解説 式(C7.1) 参照)。
降伏耐力 aPy には有効断面積 Ae=min{Ab, Abe}=Abe を用いています(指針 式(7.3))。
- 本アプリで検定しない納まり上の規定(指針 §7.2(1)): 定着長さは 20db 以上、締付けは座金+2重ナット等で緩み止め、
ベースプレートのアンカーボルト孔クリアランスは 5 mm 以下。図面で別途確認してください。
(1) 全体フロー
- 準備計算 — 引張側アンカーボルト群の重心距離 dt、偏心距離 e、dt′、d を求める。
- 中立軸位置 xn — 円形RC断面としての力の釣合いから求める。
- 断面設計 — アンカーボルト引張力 T、コンクリート圧縮応力度 σc、せん断降伏耐力 Qy、ベースプレート曲げ。
- 全塑性耐力 — 全塑性曲げ耐力 Mp、最大せん断耐力 Qu。
(2) 準備計算
アンカーボルトは半径 rb(=ボルト円直径/2)の円周上に等間隔配置とし、
曲げ軸に対する各ボルトの図心からの距離を xi = rb·cos φi(引張側を正)とします。
断面設計では図心より引張側(xi > 0)のボルトを引張側ボルト群とし、その重心までの距離 dt を用います。
$$ d_t=\dfrac{\sum x_i}{n_t},\qquad e=\dfrac{M}{N},\qquad d_t'=R-d_t,\qquad d=2R-d_t' $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 解説 C7章 設計例3 (1) p.316]
(3) 中立軸位置 xn
中立軸位置 xn は、中立軸回りの力の釣合いから導かれる円形の鉄筋コンクリート断面に関する
次式によって求めます(θ について解く。xn は圧縮縁からの距離)。
$$ x_n-R+e=\dfrac{I_n}{S_n},\qquad x_n=R\left(1-\cos\theta\right) $$
$$ S_n=R^3\left\{\dfrac{\sin\theta\,(2+\cos^2\theta)}{3}-\theta\cos\theta\right\}-n\,a_t\,(d-x_n) $$
$$ I_n=R^4\left\{\theta\left(\dfrac{1}{4}+\cos^2\theta\right)-\sin\theta\cos\theta\left(\dfrac{13}{12}+\dfrac{\cos^2\theta}{6}\right)\right\}+n\,a_t\,(d-x_n)^2 $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 解説 C7章 設計例3 (1) p.316 / 日本建築学会『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』1991年版]
ここで n はコンクリートに対する鋼材のヤング係数比(既定 15)、
at は引張側アンカーボルトの軸部断面積の総和 at=nt·Ab です。
本アプリは上式を極を持たない形 (xn−R+e)·Sn−In=0 に変形し、
θ について 0〜π の区間で二分法により求解しています
(元の形のまま解くと Sn=0 の極を根と誤認するため)。
e が小さく θ=π(xn=2R)でも釣合わない場合は、断面全体が圧縮となりアンカーボルトに引張力は生じません。
この場合は全断面有効の換算断面(全ボルトを含む)で σc=N/Ae+M·R/Ie とし、T=0 として扱います。
(4) 断面設計
a) アンカーボルトの引張力と降伏耐力
$$ T=\dfrac{N\left\{S_{nc}\,(e+x_n-R)-I_{nc}\right\}}{I_{nc}+(d-x_n)\,S_{nc}} ,\qquad
{}_aP_y=n_t\cdot A_{be}\cdot F_{by} $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 解説 C7章 設計例3 (2)a) p.317]
Snc・Inc はコンクリート断面のみの項(上式で n·at の項を除いたもの)。
耐力側はねじ部有効断面積 Abe を、換算断面や後述 Tp は軸部断面積 Ab を用います。
検定は η = T ⁄ aPy < 1.0。
b) 基礎コンクリートの圧縮応力度
$$ \sigma_c=\dfrac{N\cdot x_n\,(e-R+d)}{I_{nc}+(d-x_n)\,S_{nc}},\qquad
F_{cy}={}_cf_c=\dfrac{2}{3}F_c $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 解説 C7章 設計例3 (2)b) p.317 / 本文 §7.1(4)3)(降伏支圧強度 2/3·Fc)]
検定は η = σc ⁄ Fcy < 1.0。
c) せん断降伏耐力
$$ Q_y=0.4\,(N+T) $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 解説 C7章 設計例3 (2)c) p.317 / 本文 §7.1(4)2)(摩擦係数 0.4)]
本文 §7.1(4)2) は「摩擦耐力またはアンカーボルトの降伏せん断耐力のいずれか大きい方」としていますが、
設計例3 は摩擦耐力のみで検定しています。本アプリの既定も摩擦耐力のみ(安全側・設計例と一致)とし、
チェックボックスでボルトの降伏せん断耐力
Qby=nc·Ab·F/√3(nc=曲げ圧縮側ボルト本数)との大きい方を採る運用も選べます。
d) ベースプレートの検討
圧縮側は、円形鋼管柱から外に突出した部分を等分布荷重 w=σc を受ける片持梁とみなし、単位幅 1 mm あたりで検定します。
引張側は、アンカーボルト軸部が降伏するまでベースプレートが降伏しないよう、
ボルト1本の軸部降伏引張力 P を有効幅 b=2a で負担させて検定します(a=ボルト円半径−柱外半径)。
$$ {}_bM_c=\dfrac{1}{2}\,w\,{s_d}^2,\quad s_d=R-\dfrac{D}{2},\quad Z_y=\dfrac{t_p^{\,2}}{6} $$
$$ {}_bM_t=P\cdot a,\quad P=A_b\cdot F_{by},\quad b=2a,\quad Z_y=\dfrac{b\,t_p^{\,2}}{6} $$
$$ {}_bM_y=Z_y\cdot{}_bF_y\times\dfrac{1.5}{1.3} $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 解説 C7章 設計例3 (2)d) pp.317-318(図C7.26)]
係数 1.5/1.3 は、矩形断面の形状係数 1.5(=Zp/Ze)を安全率 1.3 で除したもので、指針の設計例の記載どおりです。
bFy はベースプレート材の基準強度(板厚 40 mm 超は低減。SN490C t=65 → 295 N/mm²)。
(5) 全塑性耐力
全塑性耐力時は、コンクリートに支圧強度 0.85Fc の等価応力ブロック(円の弓形)が働き、
曲げ引張側のアンカーボルト(図心位置より圧縮側のものは寄与を無視)が軸部で全数降伏するものとします。
鉛直方向の釣合いから圧縮域の半角 θn を求め、図心軸回りのモーメントとして Mp を算定します。
$$ T_p=n_{tp}\cdot A_b\cdot F_{by},\qquad N_c=T_p+N $$
$$ N_c=2\left(0.85F_c\,R^2\right)\left(\dfrac{\theta_n}{2}-0.25\sin 2\theta_n\right) $$
$$ M_p=2\!\!\int_{R-x_n}^{R}\!\!0.85F_c\,x\sqrt{R^2-x^2}\,dx+T_p\,d_t
=\dfrac{1.7F_c R^3}{4}\left(\sin\theta_n-\dfrac{1}{3}\sin 3\theta_n\right)+T_p\,d_t $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 解説 C7章 設計例3 (3)1) p.318(図C7.27)]
⚠ 指針の Nc 式について
指針 p.318 の Nc 式は
Nc=2(0.85FcR²)(θn/2 − 0.25 sin θn)
と印刷されていますが、同じ圧縮域(半角 θn の弓形)の面積は
R²(θn − 0.5 sin 2θn) であり、
直後の Mp の積分式(同じ領域の1次モーメント)と整合するのは
sin 2θn です(0.25 sin θn は 0.25 sin 2θn の誤植と考えられます)。
設計例の掲載値 θn=57.9°・Mp=1.42×10³ kN·m は印刷式で計算されており、
厳密式では θn=58.9°・Mp=1.45×10³ kN·m となります(差 約2%、指針値の方が小さく安全側)。
本アプリは既定を「指針 設計例3 の記載式」(設計例の掲載値を再現)とし、
入力欄のセレクトで「幾何学的に厳密な式」に切り替えられます。設計方針に応じて選択してください。
最大せん断耐力
$$ Q_{fu}=0.5\,(N+T_p),\qquad Q_{bu}=n_c\cdot A_b\cdot \dfrac{F_{by}}{\sqrt{3}},\qquad
Q_u=\max\{Q_{fu},\,Q_{bu}\} $$
[鋼構造接合部設計指針 2013 本文 §7.1(6)2) 式(7.16)(摩擦係数 0.5)/ 解説 C7章 設計例3 (3)2) p.319]
(6) 判定方法
各検定項目について η = 応力/耐力 を求め、η < 1.0 で OK(境界含まず)。
総合判定は最大検定比 ηmax で行います。判定は表示丸め前の内部値で実施しています。
ηmax ≧ 0.95 の場合は OK でも「要確認」として警告表示します。
全塑性曲げ耐力 Mp・最大せん断耐力 Qu は参考値として表示します。
指針 本文 式(7.1)(Mu ≧ α·Mpc)による保有耐力接合の判定は、
露出柱脚の接合部係数 α に標準値が与えられていない(指針 解説 p.292)ため、本アプリでは判定を行いません。
参考として柱の全塑性モーメント Mpc(Zp=(D³−d³)/6)との比を表示します。
(7) 適用範囲・注意事項
- アンカーボルトの定着(コーン状破壊・基礎躯体の検討)は対象外。
- ベースプレートの検討は指針 設計例3 と同じ簡易モデル(圧縮側=片持梁、引張側=有効幅 2a の梁)による。
- 全断面圧縮(アンカーボルトに引張力が生じない)ケースでは、換算断面の取り方が
ひび割れ断面モデルと厳密には連続しません(境界近傍で σc がわずかに不連続)。
- ボルト配置は等間隔円周配置のみ。不等間隔配置・複数円配置は対象外。
(参考文献)
- 日本建築学会『鋼構造接合部設計指針』2013年, 7章 柱脚 §7.1, pp.291-295, 解説 pp.296-298・pp.310-319.
- 日本建築学会『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』1991年版(円形断面の中立軸算定式).
- JIS B 1220-2010 構造用転造両ねじアンカーボルトセット(指針 表C7.1).
- JIS B 1221-2010 構造用切削両ねじアンカーボルトセット(指針 表C7.2).